本心に反した意思表示のサインをし、説明なく執行されるリスク。
ある白杖使いの方の懸念。
『よくわからない書類にサインさせられ、知らないうちに執行されるのではないか』
これは確かに懸念事項である。当然の懸念事項である。重大な懸念事項である。
その方は白杖使いである。つまり、視力に限定がある方である。
この場合、障害者手帳の提示など、視力障害であることを確認した段階で、自由意志の確認は書面だけではなく音声でもって複数回行われるべきであり、また、音声による中止は速やかに行われなければならない(薬液を注入したあととかは流石にどうしようもない)。
また、聴力に限定のある方の場合は、自由意志の確認は複数回行われなければならない。中止の表明についても考慮されなければならない。
身体的に意思確認の手段が限定されている場合は、とりわけ本人の意思確認には慎重であるべきではある。最悪の場合、視覚・聴覚の限定に対しては、限定のない人に比べ、ある程度の期間をもって自由意志の確認のメソッドを確立させる(限定がある方の死の権利の執行は、限定のない人に比べて慎重であるべきであり、『工数をかけてシステムを構築する』)、というのは合理的だろう(限定のある人が死の選択の権利を持たない、というのはそれはそれで制度の趣旨に反する)。
運用側に悪意がある場合、意思表明を偽造して本人の知らないままに執行される、という懸念については解決策がない。